事業継承M&Aの光と闇

事業継承M&Aの光と闇

最近、日本は後継者不足に悩まされていると聞く。少子高齢化が進み、地方の中小零細企業は後継者がなく、事業の存続が危ぶまれている。

そのような中、最近では事業継承M&Aといった、お金で会社を買い事業を存続させる、といった動きが増えている。

今回は、その事業継承M&Aについて、メリット・リスクの双方向から解説する。

M&Aの目的と、買い手・売り手双方からの視点

M&Aは、平たく言えば企業の買収だ。つまり、会社を売る&買うといった取引になるわけだが、当然売り手と買い手双方の思惑が存在する。

売り手側から見た主な側面

売り手から見た場合、主に以下の理由で会社を売却したいというケースが多い。

  • 後継者がおらず廃業を余儀なくされているが、顧客からは存続を熱望されている
  • 会社自体の赤字が慢性化し、多額の資本を投下しないと赤字体質を改善できない
  • 会社内の一部の不採算事業だけでも売却して、会社経営を改善させたい

一方、買い手側か見た時はどうか?

買い手側から見た主な側面

  • 不足している技術や人員を確保したい。有望な技術を将来に継承したい。
  • 同業他社を買収して、市場内のシェアと会社規模を拡大したい
  • 地方に根付いている会社を買収して、その地域のマーケットを確保したい

中には、60を過ぎ引退して、会社経営をやってみたいので、手ごろな企業を買収したい!といった方も中には存在する。

売り手と買い手の間に存在する闇

ここまで見てみれば、売買に関してどうということはないのだが、売り手の理由はどちらかというとネガティブな理由が多い。それに対して、買い手側の理由はポジティブな理由が多い。

もう少し突き詰めて言うと、売り手は一刻も早く売りたい。売らないと事業が潰れてしまうからだ(事業継承等、例外も中には存在する)
ところが、買い手側は、値段だけ見て安易に飛びついてしまい、あとで「こんなはずじゃなかった!」といったケースも存在する。

では、実際にどんなケースがあるのか?

財務諸表(バランスシート、P/L等)にはない、隠れたリスク

たいていの方は、会社の経営状態を見るため、バランスシートやP/Lを見て、その会社がヤバいか否かを判断するだろう。ところが、当然のことながら財務諸表には、その会社が結んでいる契約や取引詳細までは記されていないのだ。

特に、損害賠償訴訟が発生しており、現在係争中のケース等は、当然のことながら財務諸表には乗ってこない。もし、買収した後に裁判に負け、損害賠償が確定したら、その支払い義務は当然買い手が背負うことになってしまう。

なので、M&Aを行う際は、一見経営状況が良さそうに見えても、係争中の案件はないか?特殊な取引や契約は何か?はすべて確認したほうが良いだろう。

経営状態に関するリスク

意外なリスクとして、一番ありうるのが賃金未払いや残業代未払い等、労使に関する隠れたリスクだ。また、小さい中小企業となると、雇用契約書自体を結んでいないケースもある。となると、従業員が労使紛争を起こした場合、リスクが際限なく広がる可能性も出てくる。

特に、現金(キャッシュ)や直近のキャッシュフローが少ない企業のM&Aは、かなりリスクがあると思っていたほうが良いだろう。

事業継承するのに、M&Aだけが選択肢ではない

確かに、事業継承はM&Aが一番の近道かもしれない。しかしながら、不動産や自動車購入とは比べ物にならないほど、買い手側に見えないリスクが潜んでいる。

また、自動車や不動産は、万一買って失敗しても再度転売できるかもしれない(当然大損する可能性はある)が、M&Aは、一度契約が成立してしまうと、買い手側のリスクが日に日に拡大してしまう可能性も存在する。

事業継承M&Aを行う場合は、法律の専門家、財務の専門家、そして経営の専門家といった方々から、多角的に評価してもらう必要があると思う。