井の中の蛙である日本。地球の中の日本であることを自覚すべし。
やっと、日本企業が動き出した。
JETRO(日本貿易振興機構)をはじめ、日本企業がマレーシアにITや消費者のサービス部門に対しての投資拡大を目指していると、マレーシアの国営メディア(Media Bernama)が伝えた。
東南アジアの中心の1つマレーシアに進出した、日本企業を取り巻く環境についてお伝えする。
遅すぎた日本企業
先日、マレーシアマガジンに、以下の記事が掲載された。
[マレーシアのサービス部門への投資拡大を目指す日本企業]
http://www.malaysia-magazine.com/news/27971.html
JETROでは、「BtoCの新たな分野や成長が、日本からのマレーシア投資のカギになると話した。」ということだが、
あまりにも現実を見ていなさすぎるので、この記事で警鐘を鳴らそうと思う。
実は、2006年ごろから、中国系企業や韓国、台湾系企業は、販路開拓のため安い自社製品を東南アジアにPRし始めた。
特にマレーシアは、早くからITに関する国家レベルでの優遇措置プロジェクトのMSCステータスを始めており、すでにDellコンピュータをはじめ、欧米系の企業や台湾系メーカー起業が数多く進出している。
また、小売業のTESCOをはじめ、様々な外資系企業がローカル企業と合弁会社を設立し、現地にマーケットを拡大しているのだ。
それに比べ、日本企業の目線は、アメリカ本土や中国、台湾、シンガポールに限られ、マレーシアへの進出はあまり重要視されていなかった。
中には、吉野家やはなまるうどん、銀だこ等の飲食系企業、イオン等の小売+流通系企業が進出しているが、中国・台湾系企業と比べれば進出への熱意に雲泥の差がある。
つまり、日本は出遅れているのだ。
ローカルの事情を無視している日本企業
実はマレーシアは、富裕層の割合が非常に多い国だ。訳20%以上の人(約600万人)が富裕層となる。
富裕層は、経済産業省「通商白書」(2009)の定義によれば、家計あたりの年間可処分所得が35,000ドル(約400万円)を超える人口層を「富裕層」と定義している。
マレーシアの人口は約3,000万人なので、いかに富裕層が多いかということが実感できるだろう。
世界銀行の分類で高所得国とされているシンガポール、ブルネイに次ぎ、ASEANの中でももっとも経済発展が進んでいる国のひとつがマレーシアなのだ。
それにも関わらず、日本の小売業は非常に芳しくない。撤退する企業も少なからずある。
なぜなら、日本の小売業ビジネスの基本ターゲットは、日本の中間層(家計あたりの年間可処分所得が5,000ドル超(約56万円超)35,000ドル以下(約400万円以下)の層)にしているからだ。
日本の中間層とは、いわゆる平均的なサラリーマンの家庭の消費行動をを想像してみればわかりやすい。
だが、それでは、マレーシアをはじめ東南アジアの富裕層は満足できないのだ。
にも拘わらず、日本式のやり方が是と、頑なに日本式の売り方を押しつけ、結果として失敗しているのである。
現に、楽天もマレーシアから早々に撤退しているではないか?
実際に、日本の越境ECも、富裕層向け以外をターゲットにしたビジネスはあまり芳しくないようだ。
それは、つまりローカルの事情を何らわかっていないからである。
イスラム文化に疎い日本
さらに致命的なのが、日本はイスラム文化に関する理解が非常に低いことにある。
マレーシアは、世界中の中でも特に厳しい公的ハラル認証機関「JAKIMハラル」がある。そのためか、イスラム圏の信頼度が高い。
最近では、日本にもハラル認証のための特派員を派遣しているようだ。
だが、日本企業はイスラム圏進出=ハラル認証と短絡的に考えている。
そのためか、ハラル認証を取った企業も、結局のところ現地の市場は開拓できておらず、むしろインバウンド(訪日観光客)需要が伸びてしまっているケースが多い。
イスラム教を信じる人たちも、日本人と同じ人間である。
戒律を破る人もいれば、非常に熱心な信者もいる。
そして、家族を非常に重んじる。
特に、イスラム圏の人たちは貧富の格差が非常に大きく、富裕層が数多くいる。
マレーシア国内も同じで、彼らは非常に優雅な生活スタイルを好むのだ。
マレーシア国外に目を向けても、現にドバイやカタールのドーハ等は、非常に豪華な建物やレストランが数多く存在している。
そういった、イスラムの事情を深く理解せずに、ただハラル認証を取るのに躍起になっている日本企業を見ると、現地に住んでいる1人の日本人としては、ちょっとずれてないか?と疑義を感じることさえある。
まずは、同じ釜の飯を食え
結局のところ、日本人の欠点は「日本のやり方が一番すばらしい」と勘違いしてしまっているところだ。
日本人は確かに勤勉で、清潔感があり、非常に慎み深い民族だ。
だが、そのやり方では世界には通用しない。
マレーシアに移住しても、しばらくしてから帰国してしまう人たちがいるが、それはなぜかといえば、彼らは結局マレーシアの文化、食事、生活スタイルになじめなかったからだ。
日本人の価値観を一度度外視してみれば、マレーシアのスローライフスタイルは非常に人間的で面白い。
マレーシアに進出して成功したければ、まず現地にいる彼らと同じ釜の飯を食い、ともに生活するべきである。