あなた、社長である必要ある?
2006年5月1日、新たな会社法が成立した。それは、旧来の株式会社および有限会社を統合した株式会社と、合名会社・合資会社および新設の合同会社を包含する持分会社という2種類の会社類型に整理したものだ。
特に、合同会社の新設により、会社設立のハードルは一段と低くなった。
その影響からか、起業時にやたら法人を作りたがる人が多い。
今回は、その「起業ブーム」に対して、警鐘を鳴らしたいと思う。
個人事業主と法人の差
個人事業主は、当然のことながら個人で事業をしている事業体を指す。法人とは異なり法人格を持たないため、社会の信用度においては株式会社、合同会社よりは劣る。
個人事業主としてビジネスを行う場合、事業所得(利益。売上ではないのに注意!)はすべて個人の所得となるため、その利益に対しては個人所得税と住民税が課税される。日本の所得税は、累進課税制度をとっているため、所得金額によっては、法人税よりも多くの所得税が課される場合がある。
世間一般的には、事業利益が500万円を超えた場合、法人格を持ったほうがより節税につながるとされている。
それ以外にも、消費税の節税対策(法人設立年度と設立2年目の年度については消費税は課されない)にもつながるため、法人成りしたほうが良いケースもある。
[参考]個人事業主が法人化(法人成り)をしたほうがいいか考える判断基準
https://www.sumoviva.jp/trend-tips/20170220_1266.html
売上100万円で、社長になるの?
ところが、その点の節税メリット、経費等を全く考慮せずに会社を設立する人もいる。自分の資産(不動産、株)を保護するための資産管理会社ならともかく、売上100万円レベルでも「社長」を名乗りたいから、という理由で会社を作る人もいる。
だが、ちょっと待ってほしい。
法人には、法人住民税&均等割りと言って、赤字でも払わなければならない税金も存在する。また、会社の経理をすべて自分でできない場合は、税理士などと顧問契約を結ぶ必要もあるだろう。
果たして、その辺の経費を超える売上を、これから作ることができるのだろうか?その点が考えられないと、これから先いくら資金があっても足りないだろう。
見栄のために社長を名乗っても、一流の人からは相手にされない
残酷なことを言うようだが、私が付き合ってきた取引先の一流の社長さんは、「名刺の肩書」を見ることはまずない。
何を見るかというと、その人が「何ができるのか?」なのだ。
いくら「私は○○社の代表取締役社長です!」と言っても、「で?あなた何ができるの?」という話で終わるのがオチである。
逆に、肩書で取引を判断するような会社やその担当者は、いざというときにあなたに発注してくれないだろう。経験上、あなたという人物を評価していないので、かならず相見積もり(アイミツ)をとっている。
となると、仕事は信頼度の高い会社に流れて行ってしまうだろう。
むしろ、徒手空拳で起業するのであれば、「社長」という職位(Position)の肩書を捨てて、むしろ職種(Job type)やスキルを名刺に書くべきである。
目の前の見栄よりも、あなたが何ができるか?の説得力をあげるため、日々スキルを上げる努力をしたほうが、起業は成功しやすいだろう。