【フリーランス向け】元請けになったとき、抑えておくべき法律と見積技術
フリーランスになって、「案件を受注できた!」と喜ぶのもつかの間、品質が悪く入金されなかったり、追加要望が多くてずるずると納品が遅れてしまった…という経験はないだろうか?
今回は、エンジニアが押さえておくべき法律と見積技術について、私の経験をもとにお伝えする。
フリーランスに求められる力
フリーランスになって、いざ案件を受注するぞと言っても、そう簡単に受注できるわけではない。
また、仮に受注できても品質が著しく悪く納品を受けてつけてもらえなかったり、顧客との間で紛争(トラブル)が発生することがある。
それを防ぐためには、
- 見積の作成力
- 紛争、トラブルが発生した場合の問題解決力、交渉力
といった力も必要になる。
では、フリーランスにとって技術力、営業力以外にどのような知識や力が必要になるのか?
取引に関する法律の基本原則
まず最初に、おさえておくべきなのが「法律の基本原則」だ。
一体何のことだ?と思うかもしれないが、法律には必ず基本原則がある。
[参考:民法の基本原則]
http://www.media-5.co.jp/hp/products/txtfile/pdf/taky_g/P11.pdf
例えば、民法の場合、
- 権利能力平等の原則
- 所有権絶対の原則
- 私的自治の原則
という三大原則がある。今回は商取引に関する話なので、3の私的自治の原則という基本原則に沿った内容の契約が行われる。
具体的には、
- 契約自由の原則・・・誰とどのような契約を結ぶかは、個人の自由だという原則
- 過失責任の原則・・・過失や故意にしたことでなければ、責任を負う必要はないという原則
という2つの法則が適用される。
このようにビジネス(商取引)に適用される法律の基本原則を押さえておかないと、見積条件等に不備があった場合、紛争(トラブル)で不利に立たされることもある。
見積作成技術
次に、知っておいたほうが良いのが、見積作成技術だ。
見積作成技術は、主に、
- 金額の算出根拠の明確化(見積根拠)
SIer等では、工数(人月)に単価を掛け合わせたものを見積根拠とするケースが多い。 - 受注を成立させるにあたっての条件(見積条件)
作業範囲や作業完了となる条件のこと。契約不適合(昔の瑕疵担保)への対応や、プロジェクト途中での中止に対する対応も記載する必要がある。
といったポイントを抑える必要がある。
巷では、ネット上に見積書のテンプレートが数多くあるので、見積自体を作るのは非常に容易だ。
ところが、そのテンプレートをそのまま使って、いざ受注しても、後々大きなトラブルを引き起こすことがある。
◆事例1:作業範囲が不明確で、満額回収できなかった事例
Webサイト構築を受注したが、どのページを作るかを見積条件や詳細に記載していなかった。
後日、顧客からお問い合わせページを費用内でやってくれと言われたので、
費用外と断った。
その後、見積と同等の金額を請求したところ、入金が半分しか入っていなかった。
確認したところ、お問い合わせページがなければ、発注したWebサイトは完成とは言えないので、満額支払うことはできないと言われた。
◆事例2:作業途中でプロジェクトが中止になった
あるWebサービスの構築を請け負う仕事を受注した。
見積には作業範囲や見積根拠となる工数、機能一覧を添付し、発注者と無事合意した。
ところが、開発を始めて1か月後、突然発注者から、予算の都合でプロジェクトを中止するといわれた。
受注したフリーランスは、1か月間に要した費用を請求したいと交渉したが、先方は見積条件にキャンセルの条件がないことを理由に、支払いを断った。
このような形で、見積条件に不備があったため、想定していないトラブルが発生した際に大きな損をしてしまうこともある。
さらに、フリーランスは会社員と異なり、法的に手厚く保護されているわけではない。
法律と見積技術は、フリーランスの自分自身を守る力になる
法律や見積技術は、フリーランスがトラブルに巻き込まれた時に、自分自身を守る盾になる。
ましてや、フリーランスにとっては、企業との取引の場合、個人との取引以上のトラブルに見舞われることも少なくない。
フリーランスを目指す方は、ぜひ法律(特に民法)と見積技術を勉強しておくことをおすすめする。