【時事ネタ】海外の視点で見た日本の産学提携の現状とその問題点
とある所用で日本に滞在して早1週間たった。
東京を中心に活動している大学や企業を観察したり訪問したりしていると、東京をはじめ日本がマレーシアやシンガポールと比べて、産学提携を促進して新しいビジネスをはじめるのに適した環境とはとても思えない。
今回は、海外から見た日本の産学提携の現状とその問題点についてお伝えする。
新規ビジネスを作りにくい日本
まず最初に、日本は非常に新規ビジネスを作りにくい国だ。その要因としては主に2つある。
規制の多すぎる国、日本
日本という国は、何しろ規制の多い国だ。
代表的なのが配車サービスUberの普及率の異常な低さが挙げられる。それだけではなく、ドローンの実証実験、自動運転の公道実験など、技術の変革においつき、追い越すための法的基盤、実証環境が非常に脆弱だ。
その背景として、法整備をつかさどる行政機関が極度に縦割り化しており、横断的に法規制を緩和する動きが鈍いことがあげられる。
その点、私が住んでいるマレーシアは、インターネットを主軸としたさまざまなサービスがしのぎを削っている。
例えば、宅配サービスはUberEatsをはじめ、FoodPanda、DeliveryEat、HonestBee等さまざまなサービスがしのぎを削っている。
決済も、各銀行やベンチャーが様々な決済手段を提供しており、クレジットカードの保持/不保持にかかわらず様々な決済手段を選択できる。
なぜこのように多くのチャレンジャーが出てくるか?と言えば、日本と比べると規制が緩いからだ。
日本の未熟な産学提携
さらに、
ということがあげられる。
今でこそ、クラウドファンディングやベンチャーキャピタルが資金調達を支援しているが、それでもシンガポールに比べると弱い。
将来的に有望な技術変革を目指すスタートアップが大学からスピンアウトしても、資金調達に失敗し市場を開拓できずに消えてしまった例は枚挙にいとまがない。
マレーシアやシンガポールは、企業がショッピングモールや住宅、病院、大学、その他教育機関をトータルで経営し、その中で産学提携を生み出している。
昨年、マレーシアのSunway大学を視察してきたのだが、Sunway大学は、筑波大学と同じく学園都市を持っている。
しかし、Sunway大学と筑波大学は根本的に異なる。
それは、以下の点だ。
- 筑波大学は、大学の予算と提携している企業の資本の範囲内で産学提携やイノベーションを行う
- Sunwayは、Sunway(財閥)の資本の範囲内で産学提携やイノベーションを行う
日本の大学は、まず大学の予算内で研究を行っている。
その中で有望な研究や技術に関して実地検証が必要な場合は、民間の資本を活用し大学とジョイントベンチャーを設立する。
従って、特定の分野に特化した分野や技術に関しては実地検証しやすいが、総合的にビジネス展開するのには向いていない。
一方、Sunwayを例にとると、Sunway財閥は、住宅やオフィス、ショッピングモール、カジノを含むIRリゾートを包括的に運営し、多くの利益を得ている。その余剰利益を、教育機関や実地検証段階のジョイントベンチャーに出資する。
ジョイントベンチャーは、うまくいけばシンガポールのベンチャーキャピタルから増資を受け、さらにビジネスを発展させることができる。
失敗しても次々と新しいビジネスモデルを提案し、成功するまでチャレンジできる。
日本は、その点産学提携したジョイントベンチャーは失敗が許されないケースが多い。出資する企業の資本体力が大きければ存続しやすいが、もし出資する企業の業績が悪化すると存続すら危うくなる。
海外と比較すると、日本はまだまだ新規ビジネスを作りにくい国なのだ。
新規ビジネスを生み出せる資本体力をつける
現状の日本で、自分のやりたいビジネスややりたい技術を実現するには、スモールスタートもさることながら、継続させるための資本体力が必要になる。
そのためには、この記事でも述べたように、利益率の高いビジネス、コストがかからないビジネスを主軸に据え、そのビジネスの余剰利益を活用して新規ビジネスを成長させていくのが良いだろう。