【起業したい人・フリーランス向け】お客様の声?顧客目線?顧客目線の真の定義とは?
顧客目線という言葉、実はあまり好きではない。
ところが、エンジニア稼業をしていると、よく顧客から、
というクレームに近いお話をいただくことがある。
今回は、エンジニアやフリーランスにとって、顧客目線とは何か?を解説する。
顧客目線とは何か?
まず最初に、顧客目線とは何か?を整理する。
顧客目線とは?でググる(Google検索する)と分かるが、実は顧客目線という言葉に明確な定義はない。
よく、ビジネスの場で、
顧客の立場に立って自分のサービスを見つめてみよう!
という声を聴くが、そもそも顧客目線という言葉の定義があいまいである以上、その視点は属人的にならざるを得ない。
私個人的には、顧客目線は、
- 自社のサービスを受けて、顧客のメリットになることは何か?を客観的に考える
- 顧客のデメリットやリスクを、自社のサービスによってどのように回避または軽減できるのか?を客観的に考える
といった2つの視点だと思っている。
何でもかんでも顧客の言うことを聞くのが、顧客目線なのか?
実は、この顧客目線、顧客側にも大いに問題がある。
何かと、顧客側が「顧客目線で~」と主張したがるのだ。
ところが、よくよく考え行くと、
といった疑問に当たることがよくある。
顧客側は、自分たちの主張を「顧客目線で~」と言っているだけで、実態は「お客様の声」なのだ。
我々人間は一人一人自我があるし、理性や感情もある。立場や置かれている環境も異なるわけだから、いくら顧客側が「顧客目線で~」といっても、サービス提供者側は完全に目線を同一化できない。
さらに、サービスを提供する側のコンセプトと、顧客側が求めていることが異なることは往々にしてよくあることだ。
サービスを提供している側は、何かしらのプロ(専門家)であることが多い。その場合、顧客側に見えていない、気づいていないことがサービス提供者側には気づいていることもある。
つまり、何でもかんでも顧客の言うことを聞くのは、本当の意味で顧客目線ではない、ということになる。
「顧客目線」の失敗事例
◆事例1:顧客の「顧客目線に沿った」要望をその通り実現して大失敗!結局提案通りに・・・
ある顧客の案件で、Webサイトのデザインの修正を依頼されたことがあった。
私は、エンドユーザーの導線やスマホのユーザービリティを考慮してA案(私の案)を提案した。
ところが、顧客側は、
ということで、顧客が発案したB案(顧客の案)で修正することにした。
ところが、修正してみたものの、エンドユーザーからの評判は芳しくなく、結局A案で修正し直すことになってしまった。
最終的には、PVは1.2倍になったので万々歳ではあるが、今思えば痛い経験だった。
◆事例2:顧客の要望を鵜呑みにした結果、運用が大混乱。
次の事例は、8年ほど前の話になる。
顧客の強い要望を鵜呑みにした結果、運用が大混乱に陥ったケースだ。
ある顧客が、ベンダーとの保守契約が切れるのを理由に、メールサーバーを新しいサーバーに切り替えることになった。
そこで、旧メールサーバーの共有のメールボックスの取り扱いについて議論になった。
顧客側は、
と主張したのに対して、私は、
と主張して、平行線になった。
そのときは、結局顧客側のA案で移行を進めた。
移行直後は問題がなかったものの、移行後しばらくしてから問題が発覚し運用が大混乱した。それは、
共有メールボックスの中身が削除されている!
といったクレームだった。
結局前の担当者に似たような事例があったかを確認したら、案の定上記のクレームは以前からあったとのことだった。
1つのメールボックスを複数人で受信すれば、当然そういった結果になる。
もちろん私は、事前に何度も上記のリスクを口酸っぱく伝えていたのだが・・・。
今現在では、その顧客は、共有メールボックスを廃止しメーリングリストに移行している。
顧客とガチで喧嘩してでも、顧客のメリットになることをやるのが、真の顧客目線だ!
日本のサービス提供者は、顧客と喧嘩慣れしていないために、
- お客様は神様だ!お客様の声は絶対だ!
- 顧客目線でサービスを作らないと売れない!
といった顧客至上主義に陥っている。
その結果、本当に顧客にとってメリットとなることは何か?を考えずに思考停止に陥ってしまうケースをよく見る。
本当に顧客のために行動すると、必ず顧客と意見が衝突することがある。
その理由は、以下の2つによるものだ。
- 顧客よりもサービス提供者側が持っている情報が少なく、顧客にとってのメリット&デメリットを十分に考慮できていないケース
- 顧客が気づいていないメリットやリスクをサービス提供者側が把握しているケース
その場合、顧客と胸襟を開いて議論をすることが重要だ。
直後は険悪なムードになったり、顧客から厳しい声をいただくことがあるかもしれないが、その後愚直に対応することによって、経験上優良顧客ほど後々でサービス提供者側への信頼につながりやすくなる。
最後に
ここで、勘違いしてほしくないのが、
- 顧客目線を意識せずに、独りよがりなサービスを提供してもよい
- 顧客と戦って、自分の主張を通した方がよい
といった変な方向に顧客目線が傾いてしまうことだ。
お金をいただいてサービスする以上、サービス提供者側は顧客の問題解決のために真摯に対応する必要があるし、議論を打ち負かして自分の主張を通しても顧客のためにならなければ、ビジネスとして意味がない。
本当に顧客のためを思って行動する。
それが必ず、後で顧客から喜ばれるポイントになるはずだ。