【海外移住希望者向け】移住する際は要注意!グローバル化という幻想とすみわけという現実
最近日本に来て思うのだが、海外観光客が増え外国人と接する機会が増えた。
その影響からか、
といった、カテゴライズの排除、価値観の共有という話を日本人がよく口にしているのを聞く。この考えは、日本国内ならまだしも海外でも同じようにふるまうと、痛いしっぺ返しを食らうこともある。
今回は、海外移住をした人間として、その考え方に疑義と警鐘を鳴らそうと思う。
人種のるつぼとは無縁だった日本
日本は、久しく単民族国家に近い国(アイヌや沖縄の人を単民族と呼べるかは正直微妙)だった。当然のことながら、国家・国民のアイデンティティは日本人(大和民族)が主体だ。
つまり、
- 勤勉に働くことが美徳
- 自分のことよりも他人のことを優先する(自己犠牲)
- 嘘をついてはいけない
- 先祖代々の土地を大事にする
こういった、日本人独特の文化を、約2000年かけて日本人を主体にして育んできた。
そのため、
- 民族が入り混じる状態がどのようなことなのが?
- 人種が入り混じる中で、どうやって国家・国民のアイデンティティが醸成されるのか?
という経験を、国家形成してからほとんど経験してこなかったため、日本人は人種のるつぼとはどういう状態なのか?どうやって共存すべきなのか?本質的なことをわかっていない。
多民族国家マレーシア
一方、私が移住したマレーシアは多民族国家だ。
原住民のマレー人をはじめ、インド人、ジャワ人、華僑といった様々な人種が共存して国家を形成している。ところが、マレー人は人口比にして約7割、華僑が2~3割、インド系が1割と、民族構成が複雑だ。
言葉も、マレー語をはじめ、中国語、英語、タミル語等さまざまな言葉が飛び交う国だ。そういった意味では、アメリカ以上に多民族国家かもしれない。
参考:多民族国家マレーシアの人種は3種類。言語も宗教もいろいろです
マレー人が比率が圧倒的に高いこともあって、国教(宗教)はイスラム教だ。そのため、イスラム(ムスリム)向けの食事は、大抵ハラル認証を取得しているし、それ以外の人種をターゲットにしているお店もある。
また、ビジネスを動かしているのは実は華僑だ。そして、医者やエンジニアといった理系分野はインド人が活躍していたりする。
では彼らは、人種間を超えて共存できているのか?
マレーシアから学んだ、人種を超えた共存と人種間の住み分け
実際のところ共存できているか?というと、
といった方が正しいと思う。
マレーシアでは、人種を超えた交流の場合は英語を使って話す(だからこそ、英語力ランキングでマレーシアは日本よりもはるかに上)ところが、華僑同士であれば中国語や広東語で話すこともあるし、インド人であればタミル語で話すこともある。我々日本人同士でも同じで、日本語で話す。
当然、民族間で価値観もある程度変わってくる。宗教や文化によって休みの日まで異なるのだ。
このような状況下で、価値観の共有を図ろうと思ったらどのようなことが起こるか?実際にマレーシアで聞いた話を列挙してみた。
- あいつら、全然働かないじゃないか!こっちは休日返上で働いているし、残業しているのに・・・
- こっちは、仕事よりも宗教行事の方が優先だ!勝手にシフト組まないでくれ!
- 旧正月の爆竹がうるさくて眠れないよ!
このような価値観の違い、文化の違いを吸収して、果たして共存できるのか?それこそパレスチナ問題に近いことが発生することは想像に難くない。
その点、マレーシアの国家運営で素晴らしいと思うのは、
- 各民族間の価値観は最大限尊重する
- マレー人が人口比率上一番多いので、マレー人のための政策を優先する(ブミプトラ政策)
- 各民族間で価値観に関してそれぞれ干渉しない
といった形で、人口比率により政策優先度があり、また各民族のアイデンティティを尊重しつつもカテゴライズされ住み分けされていることだ。
華僑ならば、チャイナタウンに住み中華系の文化圏で生活する。
インド系の人やマレー人も同様だ。
実際にクアラルンプールを散策していると、華僑系が多いチャイナタウンや住宅地があると思えば、インド人街があったりする。日本でも同様だろう(長崎、横浜の中華街等)
その結果、各民族はのんびりと暮らし、自分たちのアイデンティティを維持しつつも、民族間の交流を活発に行うことで、自分たちの視野を広げている。
様々な民族の価値観を尊重しつつ、住み分けしよう
結局のところ、自分たちが生まれ育った価値観と異なる民族がいるということをまず理解する必要があるだろうし、その価値観を完全に共有することは不可能に近い。もしできていたら、国家間の戦争やパレスチナ問題は起きなかった可能性が高い。
だからこそ、移住先の人種とその文化・価値観を学び尊重し、受けいれつつ、日本人のアイデンティティをうまく住み分けしていく、そういった工夫が海外移住では必要だ。